来の医療、福祉は地域社会の成熟により完成される。
21世紀に確かなことは医学分野においても飛躍的な科学技術の進歩があることです。 私達はこの進歩に積極的に参加することが必要です。
しかし私達はこれが医学的事象であると共に社会的現象であることを忘れてはなりません。 医の限界には二つの要素があります。ひとつは死という根本的な限界。 もうひとつは医療が社会の価値体系に左右されるという限界です。 ますます社会の価値体系が多様になる中では21世紀の医療と福祉は地域社会全体で確立されるべきと考えます。 この場合の医療体制は、人々の健康増進から、予防、診断、治療、リハビリテーションまでの一貫した総合的な医療、いわゆるプライマリー・ヘルス・ケア(全人的医療、包括医療)となります。 このプライマリー・ヘルス・ケアも、よき人、よき地域社会があってのこと、東札幌病院はその特色を持ってプライマリー・ヘルス・ケアのネットワークの中で地域社会に参加していきたいと考えます。
ライマリー・ヘルス・ケアの基本はターミナル・ケアの基本と同一である。
21世紀の4大疾患は「心臓病」「がん」「精神病」「先天性奇形」といわれます。 東札幌病院はこのうち「がん」を主な対象と考えています。 またいわゆる成人病、慢性疾患など高齢化社会に増加する種々の疾患にも対応していこうとしています。 これらはいずれもプライマリー・ヘルス・ケアであり、「がん」の持つ様々な問題こそ私達が健康と幸福を哲学とする原点であると考えます。
療の本質は「やさしさ」にある。
この実践が最も早く遂行される形態が緩和医療であり
「ホスピス」はその象徴である。
この医療理念で東札幌病院は運営されています。 緩和医療の基本は「チーム医療」です。 各分野の専門家によって個々の患者さんの人生をいかに全うするかを本人と家族と共に医療を行うことで、 これはまぎれもなくプライマリー・ヘルス・ケアの本質です。 「チーム医療」は地域社会のケアの仕組みのモデルとなります。
院は医療のコミュニティである。
コミュニティ(共同社会)は中心的な事項に共に努力する人々の集まりを意味します。 医師は医学という科学技術をもって研鑚を積み、看護婦は看護という総合人間学をもって自分自身を含め人間の成熟を計り、 その他の病院に務める人も常にプロフェッショナルとしての向上心をもって病院に集わなければなりません。 さらに患者さんもその家族も個々の社会的背景を核に、またボランティアの人々も、このコミュニティに参加しているという認識が非常に重要です。 お互いに人間同士として尊重し合い、対等の立場で「人間の幸福」と健康を創造していこうではありませんか。
(昭和58年4月15日 石谷 邦彦 記)