乳腺外科・内分泌外科

診療内容

1.乳腺疾患

乳がん診療は検診から手術を含めた治療まで幅広く行っています。

検診は基本的にマンモグラフィと超音波検査(US)で行います。検査はマンモグラフィ検診認定資格をもった3名の女性放射線技師と4名の女性超音波検査技師が担当しています。日本乳癌学会の乳腺指導医、専門医資格および日本乳がん検診精度管理中央機構(精中機構)認定(A判定)を有する医師が検診を担当し、精度の高い迅速な検査で、優しく、丁寧に対応します。

病変があれば、細胞診、組織診(ステレオガイド下マンモトーム生検を含む)、乳管造影を行います。
乳がんと診断されれば、がんの拡がりや転移の診断のため、CT、MRI、シンチグラフィを行います。その後、手術または術前治療→手術、術後治療、放射線治療を行います。

また、がんの再発を認めた場合は治療ガイドラインに準拠した治療を行います。
同時に日本緩和医療学会認定講習会を受講した医師が、症状緩和のための治療を併用して行います。
当院では放射線治療科を併設しており、札幌医科大学放射線治療科の医師が週3日担当し、治療計画の作成および放射線治療を行っています。

(1)乳がんの手術について

基本的には、乳房部分切除術+センチネル(見張り)リンパ節生検を行っています。

リンパ節生検はアイソトープ(放射性同位元素)と色素検査を併用し、より精度の高い診断を行います。診断時に腋窩リンパ節転移を認めた場合、術前治療を施行後、乳房部分切除または乳房切除+腋窩リンパ節郭靖またはセンチネルリンパ節生検を行います。

乳房切除術をする場合、同時にエキスパンダー留置を行うことも可能です。
その際、当院と提携している形成外科の医師と協力して手術を行います。シリコンへの入れ替えは提携先病院で行います。

★センチネルリンパ節生検
腋窩リンパ節郭清の主な目的は、リンパ節に癌の転移があるかないかで、予後の予測や術後補助化学療法の選択にありますが、患側上肢の浮腫(むくみ)を生じることがあり、著しいQOLの低下を招く可能性があります。

乳がん患者全体の70%以上は腋窩リンパ節転移がなく、早期乳がんに限ればほとんどの症例にリンパ節転移がないことになります。このためすべてのリンパ節をとらずに一部のリンパ節のみを生検することにより、腋窩全体のリンパ節転移の状況を捉えられる方法が検討され、現在ではセンチネルリンパ節生検が標準的な方法となりました。

センチネルリンパ節は“腫瘍からのリンパ流が最初に到達するリンパ節”と定義されています。
すなわち、乳房のがん組織からリンパ管に入ったがん細胞が最初に到達するリンパ節であり、領域リンパ節の中で最も転移の可能性が高く、その見張りの役割をするリンパ節です。

センチネルリンパ節をさがす方法として、色素を用いる方法と放射性同位元素を用いる方法があります。当院では、これら2つの方法を併用することにより正確なセンチネルリンパ節の同定を行うようにしています。

(2)乳がんの術前化学療法について

術前化学療法の主な目的のひとつは病期Ⅲ以上の進行乳がん症例の腫瘤の縮小をはかり手術可能な状態にすることであり、さらには腫瘤の縮小により乳房温存率を増加させることであります。

化学療法の投与方法はEC(ファルモルビシン+エンドキサン)療法を4コース行い、T(タキソテール)療法を4コース投与する方法が中心です。

また、短期間で治療をおこなうdose-dense治療も行っています。HER2タイプ乳がんに対しては、ハーセプチン、パージェタを中心とした治療を行います。

(3)乳癌の術後療法について

乳がんの治療は胸のしこりを手術で切除したから、それで終了ではありません。

ごく初期の乳がんの場合(乳がん全体の15-20%)、手術で終了の場合もあります。ただし、その後、温存した乳房へ放射線照射を追加します。

手術後、患者さんの多くの方が、術後治療として、いわゆる抗がん剤を投与されています。何故でしょうか。

それは、どのがん(例えば、肺がん、大腸がん、胃がんなど)にもいえますが、手術を行なう時点で、すでに、がん細胞が、骨、肺、肝、リンパ節、脳など、がんができた部位とは別のところに、転移している可能性があるからです(手術前の検査では、小さすぎて、転移があるかどうかわかりません)。手術のみで、治療を終了した場合、数か月後~数年で、その小さく転移したところが、腫瘤を作ってきます。それが、再発です。再発後の治療は、がんをできるだけ進行させないようにするだけで、治癒までもっていくのは、とても難しいのです。

術後の治療は、がんの治癒を目指しています。再発してからの治療開始より、まだがんが、見えない小さい状態の術後から治療を開始するほうが、がんを根絶する可能性が高いのです。乳がんの術後治療には、内分泌療法(ホルモン療法といわれますが、婦人科で処方されるホルモン補充療法ではありません)、化学療法(白血球数の低下による免疫力低下、嘔気、嘔吐、脱毛など副作用が心配の方が多い治療)、分子標的治療(HER2タイプの乳がんに対する治療)があります。

実際の治療は、手術後の病理検査の結果に基づいて、治療の方針が決まります。患者さんの意思も重要な要素です。年齢、併存疾患なども考慮されます。乳がんは大きく4つタイプに分類することができます。

ルミナールA、ルミナールB、HER2(ハーツー)、トリプルネガティブの4つです。リンパ節の転移の程度、細胞の悪性度も考慮して、最終的に治療方針を決めます。

主な治療法と治療薬剤
・内分泌療法(ルミナールA、ルミナールBタイプの乳がんの方が対象)

  • 閉経前の方 ノルバデックス(5年~10年間)
  • ± リュープリンまたはゾラデックス(2-3年間)
  • 閉経後の方 ノルバデックス、アリミデックス、アロマシン、フェマーラ(5年~10年間)

・化学療法(すべてのタイプの乳がんの方が対象)

  • 1.EC療法(4-6回、2-3週間毎)
  • 2.TC療法(4-6回、3週間毎)
  • 3.EC(4回、2-3週間毎)⇒ T療法(4回 3週間毎)

・分子標的療法(HER2タイプの乳がんの方が対象)

  • 1.ハーセプチン(3週間毎、1年間)
  • 2.ハーセプチン、パージェタ、ドセタキセル(3週間毎、1年間、ただしドセタキセルは4回で終了)

2.甲状腺・副甲状腺疾患

甲状腺疾患の診療については、全国的な甲状腺疾患研究・診療拠点の一つとして有名な上條甲状腺クリニックと密に連携していることから、多くの方が紹介されて来院されます。検査は主に血液検査、超音波検査、細胞診、CT検査が行われます。甲状腺手術は年間100症例前後で、習熟度の高い病棟スタッフにより安心して治療が受けられます。

手術は原則、悪性の場合1㎝以上の大きさまたはリンパ節転移がある場合を手術適応としています。
腫瘍径が5㎜以下の場合は、経過観察しています。濾胞腫瘍の場合、原則3㎝以上を手術適応としています。
良性と診断された場合、気管支の圧迫や頚部違和感などの自覚症状がある場合の巨大腺腫様甲状腺腫、バセドウ病、橋本病が手術適応です。

手術以外の治療として、良性疾患で、約3㎝以上の腫瘤で、頸部症状のある方に、エタノール注入療法(PEIT)が外来で行われています。

3.性別違和(性同一性障害 GID)

当院では、札幌医科大学乳腺・内分泌外科、精神科、泌尿器科、産婦人科と連携し、性別違和の中のFTM(Female to Male: 身体は女性、心は男性)に対して乳房切除術を行っています。

スタッフ

副院長大村 東生札幌医科大学 臨床教授
日本外科学会 外科専門医
日本乳癌学会 乳腺専門医・指導医
日本乳がん検診精度管理中央機構 検診マンモグラフィ読影認定医師(A判定)
非常勤亀嶋 秀和日本外科学会 専門医
日本乳癌学会 乳腺専門医・指導医
日本乳がん検診精度管理中央機構 検診マンモグラフィ読影認定医師(A判定)
(大通り乳腺・甲状腺クリニック院長)

乳がんを減らすための活動~患者様、女性のために

乳がん治療を行なっている女性またはそのご家族に、乳がんについてのさまざまの情報を提供する場として「With You 北海道~あなたとブレストケアを考える会」と、乳がんで亡くなる人を減らすための社会的啓発として「ピンクリボン運動」を積極的に支援し、活動しています。
また、10月の第3日曜日の午前中に、就労されている女性または平日多忙な女性に対してサンデーマンモグラフィ検診を行なっています。

乳がん患者会(びわの会)

2か月に1回の割合(水曜日、約2時間)で当院の会議室において、患者さんと親睦会を開いています。
日常の出来事、季節の出来事をざっくばらんにお話する会です。どなたでも参加できます。
お気軽に声をかけて下さい。