ご挨拶

理事長挨拶

理事長 石谷 邦彦

 東札幌病院は、全国でも数少ない「悪性腫瘍に係る専門病院」という特別な国の認可を受けて、がんの標準的治療と緩和ケアに携わっています。

 その基本的な思想は、人間尊重の意味を込めた「人間主義」*であり、長く当院の医療の根幹を成しています。創設当初からその思想を「医療の本質は“やさしさ”にある」という表現で理念として掲げています。

「無に等しいものでありながら、自分と同じ運命のもとに他人もまた置かれていることを、身につまされて感ずることができたら、そこに生まれる感情は“やさしさ”と名付けることができるであろう。」

(「生きる場の哲学」花崎皐平 岩波新書 1981)

 東札幌病院の“やさしさ”のがん医療は科学に基づいて行われています。科学は自然科学と人文科学(人為の所産と人間本性を研究する、社会科学と哲学)から構成され、がん医療は両者の統合が必須です。

 がんの自然科学の進歩は目覚ましく、当院の医療現場では最先端の標準的治療と緩和ケアが行われています。一般に緩和ケアでは、人文科学である社会科学と哲学も多く求められ、がんの進行に伴い必要になると理解されています。しかし当院では、がんの緩和ケアはがん医療の一環であるとして常に両者が並行して実施されています。

 そのひとつの具現化が他職種連携のチームアプローチであり、このシステムは緩和ケアのみならず標準的治療の際にも必要です。当院は創設以来このシステムにボランティア活動など地域社会も組み込んで医療を行なっています。

 医療は受け手の患者さん、そのご家族、そして地域社会の皆さんと担い手である私達医療者の協働作業です。このような東札幌病院の想いをぜひご理解いただき“健康”を軸とした“平和”な世界を皆さんと共に歩む事を願っています。

*人間主義humanism:異なる社会、異なる文化に属する人々が互いに対等な人間同士として認め合い人類共同体を構成し、その一員としてふさわしく協力し合うと説く人間尊重の思想である。

(「はじめての構造主義」橋爪大三郎 講談社現代新書 1988)

東札幌病院の概要(英語) the overview of Higashi Sapporo Hospital in English

副理事長挨拶

東札幌病院副理事長 佐藤 昇志
札幌医科大学名誉教授

 私は、私がまだ札幌医大教授の時代からこの病院を尊敬していました。この病院はその設立以来、恩師である漆崎一朗札幌医大名誉教授(札幌医大がん研究所内科部門(のちの第4内科)教授、故人)が思いをいたした「がんを中心とする医学・医療の哲学」を医療の実際の現場で具現化しようと日々努力されている日本でも志高き病院でありつづけているからです。
 その哲学は、私の医師として、また医学、病理学、免疫学研究の初心でもありました。


 患者さんにとりベストと思われる医療を提供する。しかし、簡単なことではありません。
 その実践には、時代の最先端医科学、がん医学、進んだ看護学、緩和医科学が必須です。加えて適切な社会医学的配慮、事務部門の支援、あるいは行政・自治体との協調など、どれ一つを取ってもエキスパートが多数必要で、有効な組織化も必要です。

 東札幌病院は設立以来40年の歴史で「がんを中心とする医学・医療の哲学」を高いレベルで具現化されてきました。それはすでにブランドにまでたかめられているといえるでしょう。
 患者、家族の皆様はどうぞ東札幌病院のそのようなスピリットに接していただき、病を共にみつめていただきたいと思います。

院長挨拶

院長 日下部 俊朗

 東札幌病院は1983年4月に石谷邦彦理事長により開設されました。開院当初から「がん」の医療にこだわり、2009年に「悪性腫瘍に係る専門病院」の認可を受けるとともに、日本における「がん緩和ケア」の先進的な施設として運営されています。現在では診療19科目を標榜し、地域住民の皆様のかかりつけ医療機関としての役割をはじめとして、札幌市内や道内外各地の医療機関から多くの患者さんをご紹介いただいております。

 東札幌病院の基本的思想は人間尊重の意味を込めた「人間主義」であり、開設以来「医療の本質は“やさしさ”にある」を理念として掲げ、地域社会の一員として人々の健康増進から予防、診断、治療、リハビリテーションまで一貫した総合的医療に取り組んでいます。患者さんの生活に対する価値観や生きがいなど、生活や人生の質的な面に重点を置き、「もっともその人らしい」生活となることを尊重した医療と看護を行っています。これは、QOL(Quality of Life)尊重の考え方として、ホスピス・ケアに象徴されるものです。

 東札幌病院のがん治療と緩和ケアは医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・リハビリテーション・医療ソーシャルワーカーなどの多職種によるチームで行われています。当院では開設以来このシステムにボランティア活動など地域社会も組み込んで医療を行っています。最新の標準治療と緩和ケアはがんの進行度にかかわらず「がん医療」の一環として常に両者が並行して実施されています。

 また、当院は学術的な活動も盛んに行われていることも大きな特徴です。1988年に米国ニューヨークのカルバリー病院との姉妹提携を結び、現在でも定期的な職員研修を続けています。1993年には米国ハワイにてニューヨークのスローン・ケタリング記念がんセンター、カルバリー病院と当院の共同開催でがん緩和ケアに関する国際会議を開催しました。2014年7月には開院30周年を記念して「札幌がん緩和ケアに関する国際研究会議(SCPSC)」を開催、2017年6月に第2回SCPSCを開催しています。2023年4月の第3回・4回合同SCPSCでは22ヶ国から1000名の参加をいただきました。世界の医学や医療の発展とともにあることが、地域の皆さまへ最良の医療を提供することにつながるものと確信しています。

 多くの患者さんに上質な医療を提供するとともに、地域の皆様に信頼される医療機関となるべく、職員一同ベストを尽くして参る所存です。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

顧問挨拶

顧問 村上 則好

 『医療の本質はやさしさにある』これが当病院の理念であります。この理念について少しお話させていただきます。

 「やさしい」という語源は動詞の「瘦す」が形容詞化したものとありました。まさしく痩せて貧相な状態のことなのでしょう。もともとは、人や世間に対して気恥ずかしい、肩身が狭いという意味で用いられた様です。時を経て、恥ずかしく思う気持ちから周囲の人に対して控えめに振舞うさまを優雅、優美であるとなり、「心づかいが細やかで思いやりがある」という意味へと変化していった様です。
 「やさしい」という漢字は「優しい」とか「易しい」となりますが、容易なことを意味する「易しい」は『優しい配慮があって分かりやすい、簡単だ』というところから派生した用法の様です。普段何気なく使っている言葉も奥が深いなと感心させられます。
 「優しい」の「優」の字ですが、私にとっては大学時代の成績を真っ先に連想させられます。いい漢字で大好きですが、なかなかお目にかかることのできなかった表記でした。同年代の方ならご存じと思いますが、成績の表記は「優良可」でした。

 話を本題に戻します。実はこの「優」の字、象形文字的に解釈すると『大切な人を亡くし悲しんでたたずむ人の姿』を表しているとありました。確かに「憂」は「憂鬱、憂愁」などに使われる暗いイメージの漢字で、人(人偏)が寄り添うことで、「優」という字は『悲しんでたたずむ人の側に寄り添う人の姿』ということになる様です。

 私と当病院との出会いは10年ほど前、長らく勤めた金融機関時代のことです。職業柄、様々な業界や業種の方々とお会いしてまいりましたが、お役人と先生(議員・教師・医師)だけは良いイメージを持てませんでした。しかしながら、当病院と初めて接点を持たせていただいた方々を含め、病院全体が私のイメージと違っていました。職場のお取引先という関係でスタートした当病院ですが、お付き合いを重ねるほどに、人も組織も素晴らしいなあと感じられたのです。

 その後いつの時点か記憶はあいまいですが、当病院の「理念と基本方針」を知ることになります。『医療の本質はやさしさにある』という理念こそ、私の当病院に対するすべての良いイメージの背景にあるのだと気づかされました。

 『細やかな心づかいで人に寄り添う医療』私は、これがまさしく当病院の基本的な取り組みだと理解しております。この理念に基づき提供される医療と、この理念を理解した職員による行動があってこそ、皆様に自信をもってお勧めできる『東札幌病院』があると確信しております。
是非、ご利用してみてください。