東札幌病院は1983年に石谷邦彦理事長により癌緩和ケアを目的とする病院として創設され、2024年4月で開院41周年を迎えました。
2014年7月には開院30周年を記念してSapporo Conference for Palliative and Supportive Care in Cancer(SCPSC) 2014を開催しました。がん疼痛や症状コントロール、緩和ケアの将来をテーマに、アジアを中心に22ヶ国より700名の参加があり、成功裡に終了しました。
2017年6月には第2回SCPSCが開催され、がん患者の精神・心理療法における最近の進歩、palliative oncologyの将来をテーマに活発な議論がなされ、14ヶ国から750名の参加がありました。
このあと各方面から大きな反響があったため、2019年にSCPSCはグローバルな学会として緩和腫瘍学と精神腫瘍学を基盤とし、それらの研究面を主に発展させ日本・アジアのがん医療に貢献するため、International Research Society of Sapporo Conference for Palliative and Supportive Care in Cancer(IRS-SCPSC)として国際研究学会へと発展しました。
本学会の創設趣意は、プラハ憲章の “palliative care as a human right (2013年)” の理念のもと緩和ケアの科学としての先鋭的な追求と表明しました。科学は自然科学と人文科学(社会科学=人為の所産を研究する社会学と、人間本性を研究する哲学)の両者で構成されます。特にがん緩和ケアの研究は両者の調和した展開が不可欠です。
近年、臨床腫瘍学と緩和ケアの統合が世界のがん医療関係者の共通認識となってきました。本学会はその主意をさらに発展させ、科学を強調し精神腫瘍学を包含した緩和腫瘍学の確立を唱えています。本学会は地理学的にアジアが中心と連想されますが、その思想はアジアを越えて世界の空間を志向しています。そのことは本学会ウェブサイトに掲載されているアーカイブのプログラムの内容で判ると思われます。また本学会はBritish Medical Journal Supportive and Palliative Care(BMJSPCare)が学会誌となっており、世界に開かれていることの証左のひとつです。
2015年、国連は「我々の世界を変革する;持続可能な開発のための行動指針」を採択し、17の持続可能な開発目標(SDGs)を設定しました。その健康分野の目標がGoal 3として「すべての人が基礎的な保健医療サービスを、必要なときに、負担可能な費用で享受できる状態(UHC)」を中心に展開されています。そしてUHCの4項目の一つに「緩和ケア」が取り上げられています。これは未来に向けての新たな保健医療の枠組みが設定された事を意味しています。本学会でもこの潮流を見据えた議論が展開されています。
2020年に第3回SCPSCを予定していましたが、COVID-19の流行やロシアのウクライナへの侵攻の影響を受け、3度の延期を余儀なくされました。2023年4月に第3回/4回合同SCPSCとして3日間の日程で開催できました。
プログラムは3つのシンポジウムと3つのプレナリーセッション、3つのランチョンセミナー、2つのイブニングセミナーが企画され、世界で活躍している一流の演者による招待講演30題と一般演題100題の登録があり、22カ国から1000人が参加し、大きな反響を起こしました。
いずれの講演もその内容や質の高さに圧倒され、非常に高いレベルでのディスカッションも盛んに行われており、SCPSCは癌緩和ケアにおけるアジアを代表する学術会議となりました。
現在、世界のがん緩和ケアの研究者・専門家の共通認識は以下の4点であると思われます。
また、今後の緩和ケアのあり方は以下のように発展していくものと推測されます。
IRS-SCPSCは特に「がん」にこだわり、緩和腫瘍学と精神腫瘍学を基盤とし、主に学術的な研究を発展させて世界に貢献していきます。
2026年7月には第5回SCPSCを計画しています。現在そのプログラムの構成を準備中ですが、構想の一部を紹介します。
詳細は決まり次第SCPSCホームページにアップしますので随時参照ください。
The 3rd/4th SCPSCの招待演者・座長の先生方